殺戮用に開発された神経ガスを”害虫駆除剤”として観光名所で散布。



南アフリカのケープタウンにある観光名所のひとつ、
V&Aウォーターフロントであわや毒ガス事件かと思われる出来事が発生した。
害虫駆除のため散布していた薬品が違法のものだったのだ。

8月8日から行われたこの害虫駆除剤散布は、6歳の子供をはじめ多くの人が頭痛、
吐き気などの症状を患うこととなった。

ある男性は、喫茶店の外にあるテラスで6歳の息子と朝ごはんを食べに来た。
「突然、後方から信じられない異臭が漂ってきた。
異臭の元を探そうとしたが、わからない。
すると息子が『柱の後ろにマスクをつけた男の人が立ってる』と言った。
男は2メートルほど離れた柱の後ろにいたので、追いやった。」
そうだが、男はあちこちに散布し続けていた。
「帰宅後、息子が鼻血を出した。
おかしいなと思いながら過ごしていると、数時間後また鼻血が出てきた。」
どれぐらい重症なのかはわからないが、父子のそばに座っていた他の客たちも
同じような症状が出ているのではないかと述べている。

また、喫茶店の横にある歯医者から出てきた主婦は、
ちょうど男が喫茶店の外周を散布しているところに出くわした。
たまたまその散布している薬品を胸いっぱい吸い込んでしまった
主婦は直後にひどい頭痛に襲われた。
その後すぐに嘔吐を繰り返し、1週間ベッドの中で過ごしたという。
「多くの人が座ってランチを食べたり、歩いたりしている場所で、
なぜあんな危険なものを散布できるのか気が知れない。」
その喫茶店で会議をしていた夫も筋肉の痛み、首や背中の激痛を訴えている。

ウォーターフロントの修繕チームは、8月8日、Pyrinex 480 ECという薬品を散布した。
散布場所はおもに植物プランター、舗道、駐車場、喫茶店の外などだった。
この薬品は有機リン酸系の神経ガス駆除剤で、
第2次世界大戦の際には殺戮用に開発されたもの。
政府は昨年の5月、家庭内でこの有機リン酸系の駆除剤使用を禁止していた。
この薬品を吸入すると、頭痛、めまい、嘔吐、下痢、筋肉の痙攣、
ひどい場合は呼吸困難で死亡する場合もあるそうだ。

ウォーターフロント側は8月12日、
「この駆除剤が禁止されていることに事件後気づいた。」
と悠長な回答をしている。
しかもこの駆除剤は2009年に購入したものをストックしていた薬品であるので、
禁止される前だったとも主張している。
しかし駆除剤製造の記録によると、ウォーターフロントで
使用された薬品容器に貼られていた製造日は2011年6月であった。
この駆除剤は公共場所ではなく、農場などで使用されるために製造されていたそうだ。

花壇などに何かを撒いている従業員は、
ウォーターフロントでよく目撃されていたそうである。
ケープタウンに来ると観光客は必ず訪れるとも言われる場所での毒物散布は、
大きなイメージダウンにつながったであろう。

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